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2017/12/24

EMI The Dream Catcher(艾美夢遊)


 スペインのアニメ作家、Guille Rancel(ギジェ・ランセル)とManuel Gener(マヌエル・ヘネール)が、香港の歌手、方大同(Khalil Fong)が歌う「Catch A Dream」のミュージックビデオを、スペインの会社、Asociación SAVE経由で監督をしたという話。


▼方大同Khalil Fong-Catch A Dream 艾美夢遊主題曲 (Official MV )

 眠りについた女の子のもとに紫色の小動物が表れ、様々な世界を旅する、ファンタスティックなアニメーション。絵柄は今時のカートゥーンっぽいですが、ところどころに現れる中国風のデザインが目を惹きます。
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 もう一つ、歌の付いていない動画が。上のに先だって発表されたものですね。
▼方大同Khalil Fong-Catch A Dream 艾美夢遊預告片 (Official Teaser )


 最初に上げたYouTube動画の下の方に書かれた解説を、Google翻訳からあれこれ補正して解読を試みました。こんな感じでいかがでしょう。

方大同は母親のIQ、EQ、VQのコアカリキュラムの哲学を継続し、音楽を通して社会教育にポジティブな力を与えることを望んでいる。約4年間の計画と努力の後、ついに、子供向けグラフィック・ノベルのシリーズ「艾美夢遊(EMI The Dream Catcher)」が誕生した。その為に作った主題歌「キャッチ・ザ・ドリーム(捉个梦)」は、方大同のスタイルと豊かで多様な音楽を結びつけただけでなく、シンプルで鮮やかな上に豊かな意味を持つ歌詞は、エミの真善美の本質を表し、人間と人間の世界への申し立てを試みる。人間と動物の世界、そして、人間と大自然の植物/鉱物の世界は、互いに切り離せないほどの密接な関係にある。活発で自由なモータウン・スタイルの歌唱と工夫されたラップを聞く者は、思わずそれを口ずさむ。

 うーむ、お母さんの「IQ、EQ、VQのコアカリキュラムの哲学」ってどんな哲学なのでしょう。難しい事は置いといて、動画の最後にも出て来る「子供向けグラフィック・ノベルのシリーズ」というのが気になりました。この動画は、その主題歌のミュージックビデオなのですね。そして、動画解説の更に下の方、歌詞の下に載っている関連リンクの一番上、公式サイトにアクセスしてみました。


▼Gallery | Emi The Dream Catcher
EMI_the_dream_catcher_web


 

 「關於(about_us)」を解読した結果は以下の通り。

「EMI The Dream Catcher(艾美夢遊)」の創作にあたって最初に思い立ったのは、異なる年齢層や文化背景を持つ大勢の読者の為に、内容が豊富で面白く、教育的な内容にすることでした。その基本原則は、文学を簡略化するのではなく、子供達が十分に理解出来るスタイルにすることで、より高いレベルの理念やより深い考え方に触れさせ、子供達に学びを促し、周囲のことを理解し探求してもらうというものです。このシリーズで採用しているグラフィックと文章の形式は、両親が子供たちに読み聞かせるのに適しているだけでなく、子供達が自分で読むのにも適しています。読んでいる間、子供達は世界の様々な文化を体験し、視野が拡がることでしょう。


 「書架」欄によると、現在3巻まで刊行されているそうですが、繁体版と英語版は来年2018年1月初めから1月中旬に香港及び台湾の地域で発売され、その他の地域は後程発表するとの事です。簡体版は、中国本土の全ての地域から、京东(Jingdong.com)から購入することができるとの事。日本からは購入出来ない……?


 各巻の内容はどのようなものか、更に解読を試みました。固有名詞は暫定的に「艾美、Emi」→エミ、「紫兒」→紫っ子、「雪儿、Snowy」→スノウィー、としました。
1.艾美梦游:金砖的秘密(英題:EMI The Secret Of The Golden Bricks)
(金のレンガの秘密、参照元はこちらとこちら)

エミと彼女の新しい友達は夢に初めて侵入し、悩んでる王様を助け、金色のレンガの謎を解く。
エミという名の女の子が夢の中で体験した不思議な旅が語られる。夢の中で、彼女は古代都市に到着し、高貴な王様とその国の農民を助け、大いなる困難と試練を解決する。その過程で彼女は若者の助けを得て、真実の価値を学び、理解した。

2.艾美梦游:拯救雪儿(英題:EMi Saving Snowy)
(スノウィー救助、参照元はこちらとこちら)
エミーと紫っ子は冒険の途上にいるスノウィーを助ける
エミーは夢の中で、我が子を探している雪人の夫婦と出会った。そこで彼女は勇気を出して、迷子になった雪人の子供“スノウィー”を探しに行くのを申し出る。見知らぬ人に助けられ、エミーはスノウィーを父母の元へ返す

3.艾美梦游:生命之树(英題: The Tree Of Life)
(生命の樹、参照元はこちらとこちら)
エミと紫っ子は生命の樹をロボットの手から救う為に、時間と競争しなければならない。
エミは夢の中で荒れ果てた所にたどり着く。そこでは全ての樹木が切り落とされていて、たった一本残っていたのが生命の樹だった。エミ、紫っ子、起業家、そして動物のグループは時間と競争して、ロボットが最後の一本の生命の樹を切るのを阻止する。

 各巻の最後には語彙の学習とディスカッションを設け、子供達はイラストに基づいて語彙を学ぶことが出来ると共に、お父さんやお母さん、或いは他の子供達と一緒に討論出来るとの事です。対象年齢が5才から10才だそうですが、教育的要素がかなりありそうです。私などが読むと、中国語の勉強になるかしら


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 公式サイトの各巻紹介のページに載っている画像をクリックしていくとサンプル画像が大きく表示されます。彩色が綺麗で、架空の世界や動物がエキゾチックで面白そうです。しかしこの漫画、歌手である方大同(Khalil Fong)さんが自ら描いてらっしゃるのでしょうか?ウィキペディア等には漫画のキャリアは見当たらないのですが…。と、疑問に思ったところ、第1巻の通販ページ(こちら)の下の方、購買者からの投稿写真に奥付の写真があったので(こちら)、書き起こしを試みました。印刷が不鮮明で読めない文字は□にしています。

责任编辑:王倍倍
创作总监:方大同
故事原创:方大同、□□
人物设计:方大同、□□
美术及播总监:Guille Rancel
原文字编辑:Justin Carew
词汇问题讨论:□教育文化组
翻译:□教育文化组
网站:emithedreamcatcher.com


 どうやらこのグラフィック・ノベルは、方大同氏のコンセプト・総監督のもと、□□氏の協力を得て物語を作り、Guille Rancel氏(アニメ制作でも名前が出て来ましたね)が作画、Justin Carew氏が編集…、という役割分担で制作されたのでしょうか。或る意味、中国とスペイン合作と言って良い?


 近年、アニメ制作において、中国とスペインが接近しているような気がします。大きな例としては今年2017年の4月、日本語訳も出ている小説、キャロル・ウィルキンソン作『ドラゴン・キーパー』がスペイン・中国の合作でアニメ映画化の発表がにありました。当時、取り急ぎツィッターでつぶやいたものでした。ここからツリー状に連なっています。いずれ、もう少し詳しくまとめようと思います。



(最終更新日:2017年12月24日)

2016/08/19

『Long Way North(Tout En Haut Du Monde』英語版公式サイトとtwitterアカウント




 当ブログ2016月3月30日付け記事でご紹介した、フランス・デンマーク合作長編アニメーション映画『Tout En Haut Du Monde』が、英語題『Long Way North』として、来月9月30日にアメリカで公開されるとの事で(→cartoonbrew2016年8月13日付け記事)、英語版公式サイトが出来ていました(→こちら)。主人公サーシャさんのtwitterアカウントも(→こちら)。


▼Long Way North Movie
long_way_north_movie.jpg


▼Sacha(@LongWayNorth)さん | Twitter
sacha_long_way_north.jpg


 英語圏で上映されると、日本公開への道のりがぐっと近くなるように思うのですが、興行関係者の皆様、いかがでしょうか。是非ご検討を!


(最終更新日:2016年8月19日)

2016/08/11

『Ping Pong Rabbit(无敌乒乓兔)』トレーラー、ティーザー



 『ピンポン・ラビット』なのに動画タイトルの綴りが「ping-pong rabbit」とならずに『PingPang Rabbit』となっているのは、中国語のピンポン「乒乓球(ping1pang1qiu2)」のピンイン表記を用いているからなのでしょうか。この映画に興味を持ったので、ちょっと調べてみました。中国語の題名は『无敌乒乓兔(日本語の漢字にすると、無敵卓球兎)』で、制作が中国の「Mili Pictures(米粒影业)」、プロデューサーが『ハイスクール・ミュージカル』や『カンフーハッスル』等のプロデューサー、ビル・ボーデン、監督が『コープスブライド』で共同監督を務めたマイク・ジョンソンと、『龙之谷(Dragon Nest)』の宋岳峰(Yuefeng Song、ソン・ユエフォンと読むのかな…)という、中国と米国の合作映画という理解で良いのでしょうか。(参考→映画.com、Mili Pictures、MM52.com)


 中国の「bilibili.com」にUPされていたティーザーもまた、中国の風情が感じられました(動画へのリンクは→こちら。中国国外からのアクセスだからなのか、動画の貼り付けが出来ませんでした)。2017年公開予定だそうですが、完成作が見たいです。
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ところで「无敌乒乓兔」で検索すると、動画がもう一つ出て来ました。こちらはプロトタイプなのでしょうか。おいおい、調べていこうと思います。


(最終更新日:2016年8月11日)

2016/04/06

父を探して

 現在、渋谷のシアター・イメージフォーラム(→こちら)他で上映中の長編アニメーション映画『父を探して(原題:O Menino e o Mundo、監督:Alê Abreuアレ・アブレウ、2014年ブラジル公開)』について。


▼映画『父を探して』公式ホームページ
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▼長編アニメーション映画『父を探して』予告編

▼【特別公開】『父を探して』メイキング


▼Boy and the World(英語版公式サイト)
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●O Menino e o Mundo(葡語FB)
●O Menino e o Mundo(葡語blog)
▼O Menino e o Mundo (The Boy and the World) trailer 1

▼O Menino e o Mundo (The Boy and the World) trailer 2


●Alê Abreu(監督のブログ)


《あらすじ(公式サイトより)》

 親子三人で幸せな生活を送っていた少年とその両親。しかし、父親は出稼ぎにでるため、ある日突然、列車に乗ってどこかに旅立ってしまった。少年は決意する。「お父さんを見つけて、家に連れて帰るのだ」と。未知の世界へと旅立つ少年を待ち受けるのは、過酷な労働が強いられる農村や、きらびやかだが虚飾に満ちた暮らしがはびこり、独裁政権が戦争を画策する国際都市。
 それでも、少年は旅先で出会う様々な人々との交流と、かつて父親がフルートで奏でた楽しいメロディの記憶を頼りに、前へ前へと進んで行くーーー。


《感想等(ネタばれ有り)》
 様々な画材を用いて色とりどりに描かれたユーモラスな造形の世界。しかし、描かれているのは必ずしも美しい世界ではありません。

 実は今、この記事を書く為に公式サイトを読んでとまどっています(観る前にきちんと読んでいなかったので)。あの少年は確かに父を探しに旅に出たと思うのですが、「家に連れて帰るのだ」とまで考えていたのでしょうか。だって出稼ぎに行ってるのだから仕事の邪魔しちゃいけないし、家族の生活がかかっているのだし。そして、「一切のセリフもテロップも必要とせず」と公式サイトには書いてあるのですが、あの家族(というか夫婦)の会話はありましたよね。ただ、あれが人間の言葉になっているかどうか、私には判別出来ませんでした。ポルトガル語を知りませんし。ただ、身に覚えがあるのですが、幼い頃、母と上のきょうだいが何を言っているのかさっぱり分からなくて悲しい思いをしたものでした。だからきっと、あの少年の耳を通した両親の会話は、少年には理解不能なものだったのかも知れません。そういえば、少年の行く先、街の風景に使われていたコラージュに貼られていた印刷物(らしきもの)は文字が反転されていたのですが、あれもまた、まだ文字があまり分からない年頃の少年の目に映った風景を表しているのかも知れません。

 父がいなくなって、母と二人きりの家。意気消沈のあまり、少年は家族を描いた絵をトランクに入れて、父が乗ったのと同じ列車に乗り込みます。行く先々で出会う人々、目にする風景、それはとてもしょっぱいものです。最初に出会った年配の男性についていった先は、木綿栽培のプランテーション。ただでさえ年老いて体力も無いのに帽子を買うお金も無いほど貧乏だから精一杯働かざるを得ず、にもかかわらす現場監督からの無慈悲なリストラ。次に出会った青年は布を作る工場で働いているのですが、そこでも機械化による無慈悲な合理化。美しい色彩で描かれる、ちっとも美しくない社会科見学。働く人々は皆くたびれて、住む町並みもすすけた様相。それとコントラストを成すのがピカピカの高層ビル街や、けばけばしいコラージュで描かれた看板がひしめく都会の町並み。ブラジルの国技とも言えるサッカーでさえ、スタジアムで繰り広げられる試合の模様は人間味を欠いた喧噪の世界。

 そんな、貧しくくたびれた暮らしの中で時折繰り広げられるのが、美しく彩られた祝祭の数々。青年がこっそり工場で織るポンチョ。市場で披露する芸当。少年が初めて触る万華鏡。そして、通りを行進する大道芸人の一団。賑やかな音楽と色彩は、日頃の辛い生活に救いを与えてくれるかのようですし、それを祝福するかのように、大空にはカラフルな色をまとった巨大な鳥が舞っています。しかし、そんな人々の自由な振る舞いすら許さないという、悪意に満ちた弾圧と攻撃。華やかな消費社会の陰で進行する自然破壊。この辺りの描写には実写を交えていて、監督の強い訴えを感じ取ります。このアニメーション映画、ものすごく倫理的です。

 探し当てたかに見えた父の姿は、大勢の人々とは見分けがつかなくて、少年は結局、父を見つけられなかったんじゃないかと思われます。『千と千尋の神隠し』なら父が誰か突き止められたと思うのですが、ここでも無慈悲な結果となります。この映画、邦題は『父を探して』ですが、原題を直訳すると「少年と世界」であり、実は父の存在は希薄で、この映画のキモは、少年の目に映る世界の方ではないかと思えてきます。この邦題は日本のTVアニメ『母をたずねて三千里』を連想するのですが(にもかかわらずほとんど観た事が無いのですが)、この映画でも、少年(あるいは監督)にとって存在感が強いのは、父親よりも母親のようにと思われました。父を探す少年から、母の元を旅立つ青年へと、成長を見せる場面がありましたから

 しかし、この映画は少年の成長物語としては終わりません。年老いて田舎に帰り、そこには畑を耕す大人や子供達。空には例のカラフルな鳥が幼鳥となって羽ばたいているところを見ると、世界に平和が訪れた事を感じさせます。木の根元に座る元少年に去来するのは、あの懐かしい親子三人の姿。ラストシーンはとても渋いと思いました。

 ……以上、思った事をダーッと書き連ねてみたのですが、自分で書いた感想を読み返すと、何だかとても暗い話のような…。いやそうではなく、奥の深い物語なのだと思います。人々の暮らしとそれを取り巻く世界の様々な姿を織り込んだ、ときに美しく、ときにみにくく、それでも生き続ける、人と自然を描き上げた物語なのだと思いました。


(最終更新日:2016年4月24日)

2015/01/30

コルト・マルテーズの帰還

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 昨年2度に分けて記事をupした(→こちらと→こちら)、ヨーロッパの有名な漫画シリーズ「Corto Maltese」の話題の続き。作者名「Hugo Pratt」はイタリア人だからカナ表記は「ウーゴ・プラット」が良いのでしょうけど、シリーズ名であり主人公の名前である「Corto Maltese」のカナ表記をどうしようか、相変わらず悩んでいます。以前にも書いたように、イタリア人の描いた漫画のキャラクターだし、物語の中で主人公が生まれた頃のマルタ島の公用語はイタリア語だったそうだから、ここは「コルト・マルテーゼ」の表記で統一すれば良いのですが、生前、作者は、インタビューに伊語で答える時は「コルト・マルテーゼ」と言い(→こちらとか→こちらとか)、仏語で答える時は「コルト・マルテーズ」と言っていた(→こちらとか→こちらとか)ので、私もそれにならいたくなりました。なので、話題の出所の言語に合わせて、カナ表記を変えます。今回はフランス語。


 昨年、2014年10月7日に、フランスのウーゴ・プラットファンサイト「LES ARCHIVES HUGO PRATT」のブログに「Le retour de Corto Maltese sans Hugo Pratt(ウーゴ・プラット不在のコルト・マルテーズの帰還)」という記事が載っていました(→こちら)。


 仏新聞『ル・フィガロ』電子版の2014年10月6日付記事「Le retour de Corto Maltese fait le bonheur des premiers fans(コルト・マルテーズの帰還は、初期のファンを幸福にするだろう)」という記事(→こちら)が出典で、ウーゴ・プラット没後20年の2015年に続編が刊行されるという話です。同様のアナウンスが、フランクフルト・ブックフェアにて、Casterman社(キャステルマン社、仏語版の版元)のトップであるCharlotte Gallimard(シャルロット・ガリマール)氏によってなされたとの事(→こちら)。


 その新作は、シナリオが Juan Diaz Canales(フアン・ディアス・カナレス)氏、作画がRubén Pellejero(ルベン・ペジェヘーロ)氏の、スペイン人作家のコンビが担当するのだそうです。刊行は2015年10月。上述フランクフルト・ブックフェアの記事によると、キャステルマン社からは仏語版と蘭語版、同時にRizzoli-Lizard(リッツォーリ-リザード)社から伊語版、Norma(ノルマ)社から西語版が刊行されるそうです。当ブログ2014年11月20日付け記事(→こちら)の最後に思わせぶりな事を書いたのは、この件が頭の隅にあったからです。ちょうど今、フランスで「アングレーム国際漫画フェスティバル」が開催中ですが、「アングレーム国際漫画フェスティバル 日本語ブログ【公認】」の1月29日付記事によると(→こちら)、両氏のトークショーが予定されているとの事ですから、この件に関して新しい話が聞けるかも知れません。


 フアン・ディアス・カナレス氏は、日本では「ブラックサッド」シリーズのシナリオでお馴染みだと思います。カナレス氏のイラストブログ「Todos reyes, todos poetas(全ての王、全ての詩人)」には、過去の絵にコンラッドの小説『闇の奥』を漫画化したサンプルがあり(→こちら)、コンラッドといえば、プラットが大いに影響を受けた作家だそうですから、カナレス氏もこうして漫画化に取り組んだのでしょう。


 ルベン・ペジェヘーロ氏は1952年生まれのベテラン漫画家。フランスでは1997年に、Jorge Zentner(ホルヘ・セントネール)氏がシナリオ担当の『Le Silence de Malka(マルカの沈黙)』でアルバム賞を受賞しています。上述のウーゴ・プラットファンサイトに上がっている画像を見ると、「コルト・マルテーズ」の『Tango(タンゴ)』のワンシーンに類似したコマも描いているようです。シナリオ・作画共に熱心なプラットのファンだと思われますので、どんな風に描かれるか、拝見する日が楽しみです。


 ただ、昔ながらの熱心な「コルト・マルテーズ」ファンの中には、他の作家に描かれるのを嫌がる人もいる事でしょう。それでも、このような新作はオリジナルの宣伝にもなりますし、描き継がれる事によってキャラクターはこの世界を生き延びていくのだと思います。


 上述のフィガロ電子版には4人の有識者によるコメントが載っているのですが、その内、日本でも有名なバンドデシネ作家、エンキ・ビラル氏のコメントの文字で書かれた部分を訳してみました(動画の方はさっぱり聞き取れなかったのですが、文字版と大きな違いはあったのでしょうか…?)。

 エンキ・ビラル「とんでもない挑戦」
 「私はまず第一に好奇心を覚えた。精神に悪い病的な意味での好奇心ではなく、むしろポジティブなものだ。私はこのプロジェクトに対して、かなり好意的な感情を抱いている。しかし、私は作品を目にするのを待つ。私にとってコルト・マルテーズは、何よりもウーゴ・プラットだ。それは実に自由なトーンで描かれている。作者の自由でもある。ウーゴ・プラットはこの世の快楽主義者のようなところがあった。彼の死の20年後、彼が崇拝対象とするキャラクターが復活する事は、私の気を悪くするものではない。異なった物語進行は、権利を持つ者が許可を与えた以上、尊重されるものだ。それでもやはり、はっきり言って、それはとんでもない挑戦だ。新しい執筆者達には、その能力が無ければならない。それは単なるコピーであってはならない。それは、ほぼ、わずかにずらしたものになるべきなのではないか。この翻案がひとつのオマージュなるために。


 ところで、本国の「コルト・マルテーズ」公式サイトの「NEWS」欄によると(→こちら)、大型本英語版全12巻が順次刊行されるそうですよ。既に第2巻『Corto Maltese: Under the Sign of Capricorn』が出てる模様(→米amazon)第1巻はカラー版の小型本でしたが(→米amazon)、いつか出し直す日がくるのでしょうか。

2014/11/08

2015年アングレーム国際漫画祭のポスターは…

 突然ですが、私の名前は瓜坊(うりぼう)。ネットを漂う名も無き民草(たみくさ)。ブログ「漫画展望台」から移転して参りました。引き続き、漫画や漫画に関連した話題を書き連ねていきたいと思います。ネットの片隅のささやかなブログではありますが、どうぞよろしくお願い致します。


 さっそくの話題は、フランスで来年1月29日~2月1日に開催される、アングレーム国際漫画祭(→公式サイト)。つい先日、公式ポスターが発表されました。描いているのは、『カルヴィン&ホッブス(Calvin and Hobbes)』のビル・ワターソン(Bill Watterson)氏。慣例では、グランプリに選ばれた漫画家が次回のポスターを描き、議長を務める事になっています。今年のグランプリは、ノミネートされた漫画家の中から、作画家、ライター、カラリスト達の投票で決定されました。ただ、ワターソン氏は『カルヴィン&ホッブス』の連載が終わった1995年以来作品を発表せず、また、公の場に姿を現した事が無いとの事で、果たしてポスターの制作や議長が務まるのかと、アメリカの漫画に詳しい方々から疑問の声が挙がっていました。すみません、私はその辺りの事情は全然知らなかったのですが、グランプリに選んだからには、何らかの事が起こるであろうと思い、成り行きを注目していました。


 その間、ワターソン氏に関する様々な出来事がありました。ドキュメンタリー映画『Stripped(→公式サイト)』のポスター画や音声インタビュー出演、アメリカでの原画展(→こちら)、Stephan Pastis氏の連載漫画『Pearls Before Swine』でのコラボ(参考:英ガーディアン電子版記事)。……と、『Calvin and Hobbes』の連載終了から20周年にあたる2015年に向けて盛り上がっているようです。


 ▼そして、11月5日に発表された公式ポスターがこちら。
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 映画『Stripped』と同様、「コミック・ストリップ」と「ストリップ(裸になる)」をかけたイラスト。そして、全体的なレイアウトや、くたっとした紙を束ねているような質感が、あたかも新聞1面まるごと使って掲載された漫画のようで、かつての仕事であったコミックストリップへのこだわりを感じさせます。このポスター発表にあたって、ビル・ワターソン氏は仏「20minutes」というサイトの独占インタビューに答えていたので(→こちら)、記事中のインタビュー部分について翻訳してみました。言葉の選び方や話し言葉をどう表現したら等々、色々悩みました。また、誤訳があったらすみませんです(ご指摘いただけると助かります)。

Q:あなたは、アングレーム国際漫画祭のグランプリに選ばれた事を評価しますか?
A:正直なところ、漫画祭の世界とその賞は、私の日々の関心事からは遠いものです。しかし、私の仕事を人々が高く評価し続けていると聞いて、今なお満足しています

Q:あなたは次回の議長となります。フランスに出張するつもりですか?
A:いいえ、私の参加は公式ポスターの制作をする事と、行為としては、私の仕事を用いた展覧会に提供した原画の幾つかを発送した事にとどめています。

Q:あなたはもう長い間描いていません。なぜ公式ポスターの制作を受け入れたのですか?
A:私は、それは面白い挑戦だと思いました…、そして、本当にその通りでした!

Q:このポスターで表現したかった事は何ですか?
A:私はまず第一に、私自身の仕事を連想させるものにしようと努め、それで、アメリカの日曜日の新聞の付録に見られるようなコミックストリップを読んでいる絵を描き(編集部注:『カルヴィン&ホッブス』はその形式で掲載されていました)、…そして、新聞のレイアウトの中に、あたかもそこにに載るコミックストリップの一つみたいに描くと面白いと思いました。更に、普遍的な調和のある表現にするために、私は全てのセリフを、すなわち言葉に関する全ての壁を取り除きました。ただ絵だけによる物語を語る事は、一つの大きな力――そして一つの大きな楽しみ――を漫画に与えます。その感覚によって、私は、私の仕事と同時に漫画全般が表現できればと望みます。そして、読むのが面白いメディアを描く人に敬意が表されればと。

Q:カルヴィンとホッブスはあなたを有名にしました。何故ポスターに彼らは姿を現さないのですか?
A:私は私の登場人物を、私自身の仕事以外の物事を広める為には決して使いません。そして漫画は、その全体として広めるべきです。


 ……以上、拙訳にて失礼しました。ところで、前述の映画『Stripped(→公式サイト)』、DVDがリージョンフリーで売ってるのですが、字幕が無さそうで…。日本で字幕付けて公開して頂けると有り難いのですが。アメリカの新聞とコミックストリップの貴重な歴史資料を、是非とも。


【2015年1月30日追記】今回のアングレーム国際漫画フェスティバル、「アングレーム国際漫画フェスティバル 日本語ブログ【公認】」が誕生しています。現地の模様が日本語でわかるというのは素晴らしいですね。尚、今年のグランプリは初日に発表されて、大友克洋氏が受賞したそうです(→こちら)。おめでとうございます!