2014/11/08

2015年アングレーム国際漫画祭のポスターは…

 突然ですが、私の名前は瓜坊(うりぼう)。ネットを漂う名も無き民草(たみくさ)。ブログ「漫画展望台」から移転して参りました。引き続き、漫画や漫画に関連した話題を書き連ねていきたいと思います。ネットの片隅のささやかなブログではありますが、どうぞよろしくお願い致します。


 さっそくの話題は、フランスで来年1月29日~2月1日に開催される、アングレーム国際漫画祭(→公式サイト)。つい先日、公式ポスターが発表されました。描いているのは、『カルヴィン&ホッブス(Calvin and Hobbes)』のビル・ワターソン(Bill Watterson)氏。慣例では、グランプリに選ばれた漫画家が次回のポスターを描き、議長を務める事になっています。今年のグランプリは、ノミネートされた漫画家の中から、作画家、ライター、カラリスト達の投票で決定されました。ただ、ワターソン氏は『カルヴィン&ホッブス』の連載が終わった1995年以来作品を発表せず、また、公の場に姿を現した事が無いとの事で、果たしてポスターの制作や議長が務まるのかと、アメリカの漫画に詳しい方々から疑問の声が挙がっていました。すみません、私はその辺りの事情は全然知らなかったのですが、グランプリに選んだからには、何らかの事が起こるであろうと思い、成り行きを注目していました。


 その間、ワターソン氏に関する様々な出来事がありました。ドキュメンタリー映画『Stripped(→公式サイト)』のポスター画や音声インタビュー出演、アメリカでの原画展(→こちら)、Stephan Pastis氏の連載漫画『Pearls Before Swine』でのコラボ(参考:英ガーディアン電子版記事)。……と、『Calvin and Hobbes』の連載終了から20周年にあたる2015年に向けて盛り上がっているようです。


 ▼そして、11月5日に発表された公式ポスターがこちら。
affiche_angouleme_2015.jpg


 映画『Stripped』と同様、「コミック・ストリップ」と「ストリップ(裸になる)」をかけたイラスト。そして、全体的なレイアウトや、くたっとした紙を束ねているような質感が、あたかも新聞1面まるごと使って掲載された漫画のようで、かつての仕事であったコミックストリップへのこだわりを感じさせます。このポスター発表にあたって、ビル・ワターソン氏は仏「20minutes」というサイトの独占インタビューに答えていたので(→こちら)、記事中のインタビュー部分について翻訳してみました。言葉の選び方や話し言葉をどう表現したら等々、色々悩みました。また、誤訳があったらすみませんです(ご指摘いただけると助かります)。

Q:あなたは、アングレーム国際漫画祭のグランプリに選ばれた事を評価しますか?
A:正直なところ、漫画祭の世界とその賞は、私の日々の関心事からは遠いものです。しかし、私の仕事を人々が高く評価し続けていると聞いて、今なお満足しています

Q:あなたは次回の議長となります。フランスに出張するつもりですか?
A:いいえ、私の参加は公式ポスターの制作をする事と、行為としては、私の仕事を用いた展覧会に提供した原画の幾つかを発送した事にとどめています。

Q:あなたはもう長い間描いていません。なぜ公式ポスターの制作を受け入れたのですか?
A:私は、それは面白い挑戦だと思いました…、そして、本当にその通りでした!

Q:このポスターで表現したかった事は何ですか?
A:私はまず第一に、私自身の仕事を連想させるものにしようと努め、それで、アメリカの日曜日の新聞の付録に見られるようなコミックストリップを読んでいる絵を描き(編集部注:『カルヴィン&ホッブス』はその形式で掲載されていました)、…そして、新聞のレイアウトの中に、あたかもそこにに載るコミックストリップの一つみたいに描くと面白いと思いました。更に、普遍的な調和のある表現にするために、私は全てのセリフを、すなわち言葉に関する全ての壁を取り除きました。ただ絵だけによる物語を語る事は、一つの大きな力――そして一つの大きな楽しみ――を漫画に与えます。その感覚によって、私は、私の仕事と同時に漫画全般が表現できればと望みます。そして、読むのが面白いメディアを描く人に敬意が表されればと。

Q:カルヴィンとホッブスはあなたを有名にしました。何故ポスターに彼らは姿を現さないのですか?
A:私は私の登場人物を、私自身の仕事以外の物事を広める為には決して使いません。そして漫画は、その全体として広めるべきです。


 ……以上、拙訳にて失礼しました。ところで、前述の映画『Stripped(→公式サイト)』、DVDがリージョンフリーで売ってるのですが、字幕が無さそうで…。日本で字幕付けて公開して頂けると有り難いのですが。アメリカの新聞とコミックストリップの貴重な歴史資料を、是非とも。


【2015年1月30日追記】今回のアングレーム国際漫画フェスティバル、「アングレーム国際漫画フェスティバル 日本語ブログ【公認】」が誕生しています。現地の模様が日本語でわかるというのは素晴らしいですね。尚、今年のグランプリは初日に発表されて、大友克洋氏が受賞したそうです(→こちら)。おめでとうございます!