先日、東京・九段下の「昭和館」にて「双六でたどる戦中・戦後」展(→公式サイト)を見てきました。 ▼地下鉄構内の柱・昭和館入り口・脇と、あちこちで赤い色が目に飛び込んできます
会期は以下の2期に分かれていて、現在は第2期を開催中。 【第1期:時局・教育・広告を中心に】 平成28年3月19日(土)~4月10日(日) 【第2期:憧れ・流行り物を中心に】 平成28年4月12日(火)~5月8日(日) だけど、5月1日(日)限定で、第1期で展示した双六を厳選して1日だけの展示会を開催するそうです。
展示物は基本的には昭和の始め~30年代の双六、そして参考として江戸時代、明治、大正の双六が一つずつ、戦前の雑誌の付録やおもちゃが少々。双六には盤双六と絵双六があり、ここで展示されている双六は後者の方。ただ、参考展示の江戸時代のものだけは、上面に線を引いた木箱の上に白黒のコマが複数乗っていました。あれはどうやって遊ぶのか、想像がつきませんでした。
冒頭の解説によると、双六は中国を起源として鎌倉時代には既に日本に存在し、江戸時代には正月の遊びとして定着し、印刷技術の発達によって大量印刷が可能になった事によって、明治時代には新聞・雑誌の付録となり、大正時代には雑誌の正月号付録として定番化したそうです。メインで展示されている昭和の双六は、大判の印刷物がフレームに入って、その脇に「ここに注目!」と書かれたミニ解説と、ものによっては関連する印刷物が添えられていました。
昔の印刷物は色合いがくすんでいて、味わいがあります。紙質や発色が現在と異なり、また、退色もしているのでしょう。でも、正月向け商品という事で絵に気合いが入っているのが感じられますし、また、教育や宣伝を目的とした内容が盛り込まれていて、当時の世相が良く分かります。だからこそ、戦争を題材としたものや戦前のそういった思想が反映されたものはどうしても見ていて辛く感じられるのですが、戦後のものになると平和への願いが感じられるし、時代が新しくなるにつれて娯楽色が出て来るので、それらは見ていて心地よいものでした。やはり、戦争(及び戦争を必要とする傾向)は良くないですね。
どの双六ももちろん絵に力が入っているのですが、ところどころ、今でも有名な漫画家が描いているものがあり、そこはどうしても注目してしまいます。日本のマンガの歴史の中で、双六をその一つとして位置づける論者もいます。そういう観点からも、なかなか興味深く、面白い展示でした。
(最終更新日:2016年4月29日)